後遺障害認定に対する「異議申立て」を成功させる方法

交通事故で後遺障害等級認定をしても、期待通りの結果を得られないケースが少なくありません。非該当になったり認定等級が低くなったりしたら「異議申立て」を行って認定結果の変更を目指しましょう。

異議申立ての方法や成功させるためのポイントについて、弁護士が解説します。

異議申立てとは

後遺障害等級認定への異議申立てとは、自賠責(損害保険料率算出機構)が行った後遺障害等級認定結果に対して再審査を求める手続きです。異議申立てをすると、判断が変更されて後遺障害が認定されたり等級が上がったりする可能性があります。

たとえばむちうちになって後遺障害非該当となったとき、異議申立てをすれば14級や12級の認定を受けられる可能性があります。
高次脳機能障害になって9級が認定されたけれど、本来は7級が認定されるべき事案であれば、異議申立てを行うことで7級の認定へ変更されるケースもあります。

自賠責で行われた後遺障害等級認定結果に納得できなければ、異議申立てを検討しましょう。

異議申立ての申請先

異議申立ての申請先は、1回目と同じ自賠責です。調査を行うのも当初と同じ損害保険料率算出機構であり、認定の流れも基本的に同様です。

異議申立ては別機関への審査請求ではなく、自賠責への「再審査」の手続きです。

異議申立ての成功率

2020年度の自動車保険の概況(損害保険料率算出機構)によると、異議申立てが成功する確率は約15%となっています(全体件数が11585件、等級変更が認められた件数が1747件)。
https://www.giroj.or.jp/publication/outline_j/j_2020.pdf#view=fitV

成功率は高いとはいえません。等級を変更したいなら、慎重な対応が要求されます。

異議申立てをすべき状況

異議申立てを検討すべき状況は、以下の2種類です。

非該当になった

非該当とは「後遺障害に該当しない」という決定です。後遺障害慰謝料も逸失利益も払われず、後遺症に関する補償を受けられません。
むちうちで自覚症状しかない場合に非該当と判定されるケースがよくあります。
本当は後遺障害が残っているので補償を受けるべき状況であれば、異議申立てを行って判断を変更させるべきです。

等級が低い

後遺障害認定されても、想定より等級が低くなるケースです。
たとえば本来なら5級が認定される症状であるにもかかわらず9級となってしまったら、後遺障害慰謝料も逸失利益も大きく減額されてしまいます。
そんなとき、異議申立てを行うと適正な等級に上がる可能性があります。

異議申立て回数や期間、費用

異議申立てには回数制限がありません。結果に納得できなければ何度でも申し立てることができます。ただし同じ方法で何度申請しても同じ結果になるでしょうから、意味がありません。
異議申立てに期間制限はありません。示談が成立するまでであればいつでも申請できます。
ただ後回しにしても示談成立時が遅くなるだけなので、早めに申請した方がよいでしょう。

異議申立てに費用はかかりません。

異議申立ての方法、必要書類

異議申立てには2つの方法があります。

事前認定

事前認定は、加害者の保険会社へ異議申立ての手続きを任せる方法です。
1回目に事前認定を行った場合、2回目も事前認定で異議申立てを進められます。
加害者の保険会社の担当者へ異議申立書を送付すると、相手の担当者が異議申立ての手続きを行い、結果は加害者の任意保険を通じて通知されます。

被害者請求

被害者請求は、被害者自身が直接自賠責へ異議申立てを申請する手続きです。
異議申立書と新たに取得した検査結果などの資料を自ら自賠責保険へ提出し、再審査を求めます。結果は自賠責から被害者へ直接通知されます。

1回目の後遺障害等級認定申請時に事前認定を利用した場合でも、異議申立ての際に被害者請求に変更できます。

異議申立ては被害者請求で行うべき

異議申立てを成功させるには、基本的に被害者請求を利用すべきです。
事前認定では、検査結果や意見書などの資料を提出しにくいですし、具体的にどのような調査や手続きが行われているか被害者自身が確認できません。相手の担当者があまり積極的に対応してくれない可能性も懸念されます。

被害者請求であれば、被害者が自分で検査結果やあらたな診断書、意見書その他の資料を集めて提出できるので、効果的な立証活動が可能です。

1回目に被害者請求を行った場合はもちろん、1回目に事前認定を利用した場合にも被害者請求に切り替えて異議申立てをしましょう。

異議申立ての必要書類

異議申立ての必要書類は以下の通りです。

最低限必要な書類

  • 異議申立書

最低限、異議申立書さえあれば異議申立ての手続き自体は可能です。

異議申立書には、以下の内容を記載しましょう。

  • 求める認定結果
  • 1回目の判断の間違っていた点や間違っている理由
  • 後遺障害に該当する症状の存在
  • 事故との因果関係

上記のような事情を説得的に書けば、認定が覆る可能性があります。
「症状が残っているので認定されないのはおかしい」と主張するだけでは異議が通らない可能性が高いです。効果的な異議申立書を作成するには、1回目に納得できない結果となった原因を分析し、不足していた部分を補充、修正しましょう。

認定結果を覆すための必要書類

異議申立書のみ提出しても、認定結果が変わる可能性は低いので、以下のような医証を集めましょう。

  • 検査結果
    1回目の申請時に行っていなかった検査があれば、追加で行って結果を提出すべきです。
    たとえば1回目の際に神経学的検査をしていなかった場合、医師に検査を行ってもらって結果を診断書に記載してもらいます。MRIやCT、レントゲンなどの検査結果は、後遺障害認定に必須です。1回目にきちんと対応できなかった場合、異議申立ての際には必ず適切な医療機関で撮影してもらい、結果を提出しましょう。
  • 診断書
    異議申立ての際には、後遺障害診断書を書き直してもらうべき状況も多々あります。
    後遺障害診断書への記載内容により、後遺障害が認定されなくなったり等級が低くなったりするケースが多いからです。
    1回目に提出した後遺障害診断書を見直して、改善できる部分があれば改善して再提出しましょう。
  • 意見書
    診断書以外に医師に意見書を作成してもらうケースもあります。
  • その他の資料
    カルテや医療照会回答書などの資料が必要なケースもあります。

異議申立てを成功させるポイント

後遺障害の異議申立てを成功させるには、以下の4つがポイントとなります。

1回目の失敗理由を精査する

まずは1回目の失敗理由を見極めなければなりません。
失敗理由がわからないまま異議申立てをしても、同じ結果になってしまう可能性が濃厚です。
前回受け取った認定理由書の内容をみて、なぜ非該当や低い等級になったのか原因分析しましょう。
症状の立証が足りていない場合、因果関係が否定される場合、治療状況や経過に問題がある場合など、ケースによって問題点はさまざまです。

失敗理由がわかれば、それをつぶすための資料を用意して異議申立書にも反映させることができます。

集めるべき資料を見極める

異議申立てを成功させるには、新たな医証の提出が必須です。
画像や神経学的検査の結果、新たな診断書、意見書などを集めなければなりません。
具体的に必要な資料はケースによって異なります。

  • 主治医に診断書を書き直してもらう
  • 主治医に意見書を作成してもらう
  • 別の検査を受けて診断書に記載してもらったり、検査結果を提出したりする
  • 別の病院で診察や検査を受け直して資料を用意し直す
  • 転院せずに、主治医以外の医師にセカンドオピニオンを求めて意見書を作成してもらう

どういった資料を集めるべきか、見極めて対応しましょう。

異議申立てを専門家に依頼すべき理由

異議申立ての成功率は15%程度であり、高いとはいえません。15%には弁護士に依頼したケースが含まれており、自己判断で対応すると、等級変更の可能性は更に低くなってしまうでしょう。

異議申立てを専門家に依頼すべき理由、メリットを示します。

方向性を的確に判断できる

異議申立てを成功させるには、どういった主張を行ってどのような医証を用意すべきかなど、方向性を適切に決定しなければなりません。
被害者だけでは判断しにくく失敗するリスクも高まります。
弁護士に依頼すれば的確な内容の異議申立書を作成し、効果的な医証を用意できて結果を変更できる可能性が上がります。

手間がかからない

弁護士に異議申立てを依頼すれば、被害者にかかる負担は小さくなります。
被害者請求にかかる数多くの書類や異議申立てを成功させるための医証の収集も、弁護士に任せていれば、さほどの手間にはなりません。

効果的に異議申立てを進めて判断を変更させるため、交通事故に詳しい弁護士へ依頼しましょう。

異議申立ても認められなかった場合の対処方法

自賠責への異議申立てが認められなかった場合でも、自賠責保険・共済紛争処機構へ調停を申し立てれば判定が覆る可能性があります。
最終的には裁判をすると、裁判所が自賠責とは異なる視点で適切な後遺障害等級を判断してくれます。
弁護士は自賠責保険・共済紛争処理機構や裁判の手続きも承りますので、名古屋で交通事故に遭われた際にはお気軽にご相談ください。

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