自転車事故に遭われた方へ

自転車事故は自動車やバイクの事故と違い、自賠責保険が適用されません。
加害者が自転車保険に入っていなければ、加害者本人へ直接損害賠償請求する必要があります。

自分が自転車事故の加害者となってしまったら、被害者へ高額な賠償金を払わねばならない可能性もあります。

自転車事故の特徴や対処方法、注意点を弁護士が解説します。

自転車事故とは

自転車事故とは、自転車が加害者や被害者になる交通事故です。
自転車同士の事故は比較的少なく、自転車と自動車やバイクの接触事故、あるいは自転車と歩行者の接触事故が多くみられます。

道路交通法上、自転車は「軽車両」に分類されており、一種の「車両」扱いになります。
自転車が当事者になる事故も「交通事故」として、道路交通法が適用されます。

自転車事故に遭った場合の対処方法

自転車事故にも道路交通法が適用されるので、事故に遭ったら法律上の義務を守らねばなりません。

被害者の救護

まずはけが人の救護を行いましょう。自転車が歩行者と接触したとき、歩行者を見捨てて走り去ると「救護義務違反(ひき逃げ)」になってしまいます。
逮捕されて刑罰を適用される可能性があるので、絶対にその場を去ってはなりません。

危険回避措置

周囲の危険を除去する措置をとりましょう。周りに散らばったものを片付けたり自転車を脇によけたりします。

警察への報告

自転車事故でも必ず警察へ報告しなければなりません。軽い接触でけが人が出なかった場合でも、110番通報して警察の到着を待ちましょう。

自転車事故の加害者に対する刑事責任は?

うっかり歩行者と接触してケガをさせてしまった場合、自転車事故の加害者には刑事責任が及びます。
適用される可能性のある刑罰は、以下の3種類です。

過失致傷罪

通常程度の不注意によって事故を起こし、被害者にケガをさせてしまった場合に成立する罪です。ただし過失致傷罪は親告罪なので、被害者が告訴しなければ刑事事件になりません。

刑罰は30万円以下の罰金または科料です。

過失致死罪

通常程度の不注意によって事故を起こし、被害者を死亡させてしまった場合の犯罪です。
刑罰は50万円以下の罰金刑です。
過失致死罪は親告罪ではないので、遺族が刑事告訴しなくても刑事事件になる可能性があります。

重過失致死傷罪

悪質な不注意によって自転車事故を起こしてしまった場合、重過失致死傷罪が適用される可能性があります。
刑罰は5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金刑です。
重過失致死傷罪も親告罪ではないので、被害者が刑事告訴しなくても処罰対象になります。

重過失致死傷罪に問われやすいのは、以下のような自転車事故です。

  • スマートフォンで通話しながら運転していた
  • イヤホンをつけて周りの音が聞こえないまま運転していた
  • 傘をさしながら片手で運転していた
  • 車道の右側を走行していた
  • 高スピードで歩道を走っていた
  • 夜間にライトをつけずに走っていた
  • 危険な2人乗りをしていた

夜間にライトもつけずイヤホンをして運転していたなど、上記の2つ以上の事情が重なると、重い刑罰が適用される可能性が高くなります。
ひき逃げなども加わると、初めての事故でも実刑になる可能性があり「自転車事故だから大丈夫だろう」などと軽く考えてはなりません。

自転車事故に保険は適用される?

自転車事故の場合、保険の適用関係についても自動車やバイクの事故と異なります。

自賠責保険がない

自動車やバイクを運転する場合、必ず自賠責保険または共済に入らなければなりません。
自賠責保険(共済)とは、交通事故の被害者を救済するための最低限度の保険(共済)です。自賠責に入らずに運転すると刑罰も適用されるので、ほとんどの人が自賠責に入っています。そこで人身事故の被害者になったら、最低限、自賠責から保険金を受け取れます。

しかし自転車には自賠責保険制度がありません。自転車が相手の事故に遭っても自賠責保険から保険金が支払われないので、相手本人や相手の自転車保険会社へ請求するしかありません。

自転車保険に入っていない人も多い

相手が自転車保険に入っていれば、自転車保険会社へ治療費や慰謝料などの賠償金を請求できます。示談交渉も自転車保険会社が代行するケースが多数です。
しかし自転車保険に入っていない人も多く、その場合には相手本人へ賠償金を請求しなければなりません。相手に支払い能力がなければ十分な賠償金を支払ってもらえない可能性もあります。

自転車事故の注意点、特殊性

自転車事故には以下のような特殊性があるので注意しましょう。

後遺障害認定の制度がない

自転車事故でケガをしたら、完治せずに後遺症が残ってしまうケースもあります。
自動車事故の場合、自賠責の後遺障害等級認定制度を適用できるので、後遺障害に対する適正な慰謝料や逸失利益を計算しやすいですし、自賠責からの補償を受けられます。

しかし自転車事故には自賠責保険が適用されないので、後遺障害等級認定制度を利用できません。後遺症に対する賠償金は、当事者同士で話し合って決める必要があります。
お互いに後遺症に関する知識がない場合、どの程度の慰謝料や逸失利益が相当か判断しにくく、話し合いがまとまりにくくなります。
最終的には、裁判を起こして裁判所で後遺障害認定してもらい、賠償金額を定めてもらうしかありません。

当事者同士の交渉になるケースも多い

歩行者が被害者となる自転車事故では、加害者が自転車保険に入っていない限り、加害者本人へ賠償金を請求しなければなりません。
加害者に誠意がなく無視されてしまったり「お金がない」といわれて払ってもらえなかったりするリスクが発生します。

未成年者が運転しているケースも多い

自転車には免許制度がないため、子どもも運転しています。自転車事故の加害者が未成年の場合、賠償金の支払い能力がないケースがほとんどです。
子どもがおおむね12歳以下であれば親に「監督者責任」が発生するので、親に賠償金を請求できます。
一方、子どもが13歳程度の知能を備えている場合、親には監督者責任が発生しません。子ども本人へ支払いを請求するしかなく、適切な補償を得られないリスクが高まります。

自転車が被害者の場合、1人で対応しなければならない

自転車が被害者で自動車やバイクが加害者の事故でも、被害者が困る可能性があります。
自転車側に任意保険が適用されず、示談交渉を保険会社が代行してくれないからです。
被害者は、1人で相手の保険会社と示談交渉を進めなければなりません。
保険会社のペースで示談が進められ、被害者側に不利な条件となってしまうリスクが高くなり、大変な精神的負担も発生します。

自転車事故の過失割合

自転車事故の場合、自動車やバイクの事故とは異なる過失割合基準が適用されます。

自転車は自動車やバイクと比べて車体も軽く、事故に遭ったときにライダーが受ける損害も大きくなるでしょう。立場が弱い分、自転車の過失割合は小さくなります。
たとえば自転車と自動車やバイクが接触した場合、多くのケースで自転車側の過失割合が小さくなり、自動車やバイクに高い過失割合が認められます。

反対に、自転車と歩行者が接触した事故の場合には、自転車側の過失割合が高くなります。

自転車事故における過失割合は、事故態様に応じて個別的に検討し、定めなければなりません。適切な過失割合がわからない場合には、弁護士へ相談してアドバイスを求めましょう。

自転車事故の被害者が請求できる賠償金の種類や金額

自転車事故で被害者となった場合、請求できる賠償金の種類や金額は自動車やバイクの事故と同じです。
自転車事故だからといって金額が低くなることもありません。

自転車事故で請求できる費目の例

  • 治療費
  • 付添看護費
  • 雑費
  • 休業損害
  • 慰謝料
  • 後遺障害逸失利益
  • 死亡逸失利益
  • 介護費用
  • 器具や装具の費用
  • 壊れた自転車の修理代や時価相当額
  • 壊れた所持品の弁償金(時価相当額)

自転車事故の被害に遭ったときの損害賠償の方法

相手の保険会社へ請求する

相手が保険に入っていたら、保険会社へ保険金を請求しましょう。
保険会社が示談交渉を代行するケースが多く、話し合いを進めて条件がまとまったら保険金の支払いを受けられます。

相手に直接請求する

相手が保険に入っていない場合、相手に直接請求しなければなりません。
話し合いがまとまらない場合や請求しても無視される場合、訴訟やADRの利用を検討しましょう。

自分の保険を利用できるケースもある

自分の保険を適用して補償を受けられる可能性もあります。
「人身傷害補償保険」や「搭乗者傷害保険」に入っていたら、自転車事故にも適用されるケースが多いので、保険会社へ請求しましょう。
無保険車傷害保険を適用できるケースもあります。

弁護士費用特約を適用する

自転車事故に遭った場合でも、弁護士に依頼するメリットは大きいです。
相手に対する賠償金請求を弁護士に依頼すると、適正な金額を算定できてより確実に補償を受けられます。相手が不誠実な場合でも訴訟を起こして追及できるでしょう。
自動車保険や火災保険、生命保険などに付随する弁護士費用特約を適用すれば、無料で弁護士に相談や依頼ができるので、一度保険の加入状況も見直してみてください。

当事務所では交通事故対応に力を入れて取り組んでいます。自転車事故に遭われてお困りの方は、お気軽にご相談ください。

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